尚美のこと【ちくび】
その日は尚美と一緒にシャワーを浴びた。
浴室に入りお互いの体を洗う。何か厳かな行事の前のお清めのようだ。
それぞれ浴室から出て部屋着のガウンを羽織る。先にベッドで横になっている私の隣りに彼女が来て、薄いキスを交わす。枕元の照明の操作盤に手を伸ばす彼女の腕を取り、体を引き寄せる。濃いキスを仕かけながらガウンの襟を開こうとしたとき、彼女が言った。
「また、山小屋に行きたい」と。
彼女の敬語は最近短く省略されている。でも耳障りは相変わらず心地よい。
どうやら彼女の夫の事情で4、5日自由な時間が出来るらしい。その事情も聞いたが、ここでは書かない。事情には著作権のようなものがあって侵害してはいけない、という気持ちがある。と言っても、夫の所有権を犯しているのは張本人の私なのだが…。
ベッドの中で尚美と相談して山小屋のある高原ドライブの日程を決めた。
初めて見た尚美の「からだ」。肌の触り心地、吐息の温もり。コンディショナーの香り、暗闇の交わりだからこその鮮明な記憶が甦る。
それを思い出しながら、さらに濃く深いキスを彼女に求めた。
そして中断していたガウンの襟を再開する。尚美の小さな乳房と標準サイズの乳首。控えめな乳房を手のひらでやさしく包み、乳首を指で挟んで愛撫していると、息が荒くなり、乳首が固くなってきた。
彼女の胸は感じやすいと思う。大きく肉の多い胸より、彼女の胸のほうが密に神経が行き届き、敏感になりやすいのかも知れない。と、勝手な解釈で納得してみる。
「あぁ… いぃ… 」洩れる声に嘱されて、さらに激しく愛撫する。
股間に手をやると、厚い唇が熱い粘膜で覆われて、濡れていた。
「あぁ… もっ と… 」
私は乳首を歯を立てて噛んだ。
愛らしく可愛いいものは悪戯に弄んで虐めたくなる。
小さな胸にコンプレックスを感じて捉(とら)われている尚美。
今日の私は愛らしい乳首に執(とら)われてている。
鞄の中に忍ばせている縄のことを忘れている。
尚美を見送ったあと、私は車の中で高原ドライブと山小屋での過ごし方を想っている。
彼女の好きそうなカフェに寄り、お洒落なレストランで美味しいランチをする。今度は雨戸を閉めないで、月明かりで尚美の「からだ」を見たい
と。
ひと通り想いを過ごして、ふと…
生理は大丈夫かな?と、頭を過った。
つづく…