尚美のこと【二夜 狂想】
今、尚美の創っている世界には、二人の男を招き入れて弄ばせている情景があるのだろうか? そして私の像はそこにあるのだろうか?
私は仮想の入口に尚美を導き、門を開いて背中を押した。しかし今は、彼女自ら築いた狂想の世界がある。
「あぁ… あぁ… 」
悦感に委ねた体が灯りと共に揺れている。…その灯景に固唾を呑んでいる私。
「だめ… だ、め… いけない… 」
尚美は二メートル半ほど離れた私を、薄く目を開いて見ている。その片方の目から一筋の雫が頬をつたった。
「いきたいのか?」
尚美は小刻みに幾度も首を縦に振り、「お願い、きて」と言った。私は彼女との距離を縮め、彼女が築いた狂想の世界へ立ち入った。気に満ちた余韻を引き連れて。
私と尚美は狂想の中で絡み交わった。
もっと激しく、もっと深く、もっと永く、
… もっと淫に。
「い い… い い … すご、く、いい」
静寂な夜の闇に、尚美の喘ぎ悶える息と声が吸い込まれていく。
「も もう だめ… いき そう… 」
尚美は啼きながら幾度も絶頂を迎えた。私の背中に回した腕をきつく締め、指を立て、その度に息を詰めた。彼女の顔は充血し、首の血管が浮き出ている。
「あぁ… また… また また、いくっ」
「おねがい… いっしょに 」
私も限界が近い。「いきそうだ」と声にした時、尚美が言った。
「そのまま そのまま、いってもいいよ」
私は動きを止めて彼女の顔を見た。迫りくる限界が少し退いた。
「そのまま… いって」
「中に、中に 出していいのか?」
尚美も昇りつめる手前で笑顔をつくろい小さく頷いた。私は動きを再開した。彼女の壺の中の凹凸をすべて感じとるように、ゆっくりと。
二度目の限界が前より大きな波になって訪れた。尚美の体の事情に甘えることにして、溜めておいた欲情と精液を壺の中へ吐き出した。ペニスの管の中を精液がどくどくと流れる快感に酔いながら。
尚美も、私の放出の気配に唇を合わせて一緒に果てた。吐き出しきれなかった欲情の一部は、唾液となって合わせた唇から彼女の体の中へ吸い込まれていった。
ペニスを壺から抜くと、白濁した汁が、濡れても大丈夫なシーツを濡らした。
山小屋からの帰り道、ラーメン屋に寄った。尚美は並。私はラーメンと餃子六個の付いたセットを注文した。
「二個、餃子ちょうだい?」と尚美が言ったので小皿に移した。
尚美から、温泉とラーメンが好きだと聞いていた。
尚美のこと【二夜 後編】
私が車を降りると尚美はすぐ後ろを付いてきた。
山小屋のドアを開き照明のスイッチを入れようとしたとき、私の背中に身を寄せてきた尚美を感じた。灯りがついて自分の顔を見られたくない…と、その仕草が伝えているようだった。
私はスイッチを入れるのをやめて、彼女のほうを振り返り胸元に引き寄せた。俯いた顔を覗くと瞳はまだ潤んでいた。
浅いキスを交わすとすぐ、彼女は私のセーターのボタンを外してきた。それが合図のように、私達は競うようにお互いの服を脱がしていった。下着姿になった私と彼女は、寝室にしているロフトへの階段を昇った。
枕元の行灯を灯し、体を重ね深いキスをする。彼女の体は火照り熱を帯びていた。そして或る種のまったりとした香りを放っていた。
尚美は積極的に私を求めてきた。そうせざる負えない事情を持っていて、それを無言で伝えようとしている。また彼女は焦っている、早く伝え切りたいようだった。
尚美が私の(溜めておいた欲情と精液のお陰で臨戦態勢が整った)硬いペニスに手をやったとき、私は彼女の体を離し、上体を起こさせ、行灯の脇へ座らせた。彼女はペニスから手を離して、私の導きに困惑しながらも従い、何故?というふうに呆然としている。私は彼女の前から二メートル半ほど離れて座って胡座を組んだ。
そして…「自分でしてごらん?」と言った。
彼女は瞬きを幾度かして「え?…」と声を漏らし、首を横に振った。
「いいから、してごらん、見たいから」
長い沈黙と戸惑いのあと、彼女はゆっくりと、おそるおそると、股間に手を運んだ。
「もっと足をひろげて、もっと、」
「片方の手で胸を触ってごらん」…彼女は従った。
「さっきのお風呂のことを思い出して… 二人の男を」
彼女は、いやっ と言って激しく首を振った。手を止めた彼女に「さぁ、続けて、見せて」と催促する。
否応を許されず続ける尚美。乳首を摘み、摩る。中指と薬指でクリトリスを擦る。次第に息づかいが小刻みになり荒くなる。彼女の潤んだ瞳が何かを懇願しているかのように私を見ている。これから官能の極地へ踏み入れることへの赦しを乞うように。
私は続けた。「あのまま居たらどうなったと思う?」「男達が尚美に近づいて手を伸ばしてきたら」
尚美は「いやっ… だめっ、」と言って、蘇る記憶を必死に振り払い拒んでいる。
しかし、乳首とクリトリスの快感がその記憶を鮮明にして、再び呼び起こしている。
私はもうひとつの過去、パラレルワールドを仮想しながら、自らも官能の極地へと踏み入れようとしている。今、目の前にいる尚美の恥態に導かれて。
「すごく濡れてる、男達も見ているぞ」
尚美の指の動きは一層激しさを増した。右手は乳首を捏ね、左手の中指と薬指はいつの間にか、壺の中に滑り込ませていた。挿した指の関節で急所
を探り、指のつけ根でクリトリスを擦っている。粘液も溢れるほど増して、くちゅくちゅと壺の外へ掻き出す音をたてている。シーツには大きな滲みができていた。
濡れても大丈夫なシーツを濡らしている。
【二夜 狂想】に つづく…
尚美のこと【二夜 前編】
二日目、空は曇っていて昨日より寒い朝を迎えた。
初日は欲張ってアクティブに行動したが、彼女との夜は穏やかに親密に愛し合った。木の香りのするこの部屋で、初めて触れた尚美の「からだ」の成長を確かめるように。
私は射精しなかった。二夜目の夜を濃くするために欲情を残すことにした。六十も過ぎれば精の計画も時には綿密に考えなくてはならない。
この日の予定は昨日行けなかった観光をして、午後は少し離れた温泉地に行くことにした。尚美からは温泉が好きだということを聞いていたので、前もって予定に入れていた。温泉の前に着くと彼女は、はしゃぎながら嬉しそうに車から降り、私の腕を掴んで組んできた。
そんな私達を遠巻きに視線を向けている二人組の男達がいた。どちらも七十近い年齢に見えた。この温泉施設には男湯、女湯、家族風呂の他に混浴風呂がある。たぶん男達は混浴目的だろうと、その目つきの質から察しがついた。
その男達を見て、私に或る企てが頭に浮かんだ。それは彼女を家族風呂へ入ると偽って、混浴の方へ連れていくこと。全く悪ふざけが過ぎる、と思ったが、試してみたい衝動に何故か勝てなかった。
実行に移すと案外容易に事が進んだ。男達は私達が脱衣場への暖簾をくぐるのを、売店で装いながら横目で見ている。私と彼女は脱衣場で服を脱ぎ、浴場に入って湯舟に浸かった。少し熱めの湯だった。
私は尚美の肩を抱き顔を近づけると、それに応じるように彼女は唇を合わせてきた。肩に置いた手をずらして胸に手を当てる。手のひらに乳首のしこりを感じる。湯気が二人を包んだ。
その時、尚美の閉じていた瞼が物音と同時に急に開いた。あの二人組の男達が時を見計らって入ってきたのだった。驚いた尚美は両手で胸を覆って私から遠ざかり、湯舟の奥に身を寄せて潜めるように気配を小さくした。
言い忘れていたが湯舟も浴場も狭い。男達は湯舟に入らず縁に座っている。暫くして、ひとりの男が私に声をかけてきた。
「この温泉ええでしょ、儂らはよぅ使こうとるんです、こっち(混浴)の方が湯が濃い感じがするけぇね」
初めてなので本当か嘘かわからない。「そうなんですね」と応えた。もうひとりの男が言った。
「いいですなぁ、若い奥さんで、羨ましいですわ」
それを聞いて私は応えた。「いえ、夫婦じゃないんですよ」男達は私の顔を見て続きを待っている。
「不倫関係なんです」
ひとりの男が、「ほぅ…」と間の抜けた相槌を打った。
咄嗟に出た嘘ではない言葉。男達の好奇な眼差しが尚美に向けられた。それを聞いた尚美の背中が湯気の中でさらに小さくなった。
意を決した彼女は、男達を避けながら湯舟の縁沿いに身を屈めながら移動して、急いで上がり、脱衣場に逃げて行った。男達の視線が彼女の全裸の後ろ姿を追っている。
尚美は手当たり次第に服を着て、外に飛び出して行った。私を置き去って。
後から来た私を見た尚美は、「いや… ひどい 」と言い残して助手席に乗った。
もしかしたら、今夜のために残していた欲情と精液は諦めるしかないのかな?と半ば覚悟しながらハンドルを握った。
尚美の顔を覗くと、薄く、強く、唇を噛んでいた。
【二夜 後編】に つづく…
尚美のこと【一夜】
尚美は唇を薄く強く噛み、口惜しそうな顔をして車の窓の外に視線を向けている。彼女に長襦袢を着せて初めて縛った、あのときと同じ顔をしていた。
しかしその視線の先は私ではなく、流れる景色でもなく、少し前の時間に向けられているようだった。
私はそんな彼女に声をかけられない。
突然降りかかった、余りにも理不尽で衝撃的な出来事。その動揺と戸惑いを癒す言葉が見つからない。
山小屋に着いて車を停めても、暫く彼女は膝の上の拳を強く握ったままで居た。
それはニ夜目を迎える前だった。
山小屋のある高原ドライブへ出発する朝は快晴で、尚美の生理は二日前に終わっていた。どちらも幸運だった。
尚美との出逢いから年を越えてまだ肌寒さの残る初春。彼女の夫の事情は彼女に二泊三日の自由を赦してくれた。
前とは違ったドライブコースを選び、私の妄想通りのお洒落なカフェとランチをして、彼女の素朴な笑顔を見ながら高原の素朴な初春の自然を感じて過ごした。
そして暮れ始めた頃、山小屋に向かった。着いてシャワーを浴びて、お洒落なお店のテイクアウトとワインを嗜み、心の片隅で彼女の夫の事情を祝った。
でも残念なことに、山小屋の夜に月は無く、月夜に照らされた尚美の「からだ」を眺めることは諦めて、枕元の行灯を灯して華奢な体を嗜むことにした。
その夜は、初めての日を淡く上書きするように、キスをして触り合って交わった。
念のため、濡らしても支障のないシーツをかけた。少しカビ臭い布団の上に。
【二夜 前編】に つづく…
尚美のこと【ちくび】
その日は尚美と一緒にシャワーを浴びた。
浴室に入りお互いの体を洗う。何か厳かな行事の前のお清めのようだ。
それぞれ浴室から出て部屋着のガウンを羽織る。先にベッドで横になっている私の隣りに彼女が来て、薄いキスを交わす。枕元の照明の操作盤に手を伸ばす彼女の腕を取り、体を引き寄せる。濃いキスを仕かけながらガウンの襟を開こうとしたとき、彼女が言った。
「また、山小屋に行きたい」と。
彼女の敬語は最近短く省略されている。でも耳障りは相変わらず心地よい。
どうやら彼女の夫の事情で4、5日自由な時間が出来るらしい。その事情も聞いたが、ここでは書かない。事情には著作権のようなものがあって侵害してはいけない、という気持ちがある。と言っても、夫の所有権を犯しているのは張本人の私なのだが…。
ベッドの中で尚美と相談して山小屋のある高原ドライブの日程を決めた。
初めて見た尚美の「からだ」。肌の触り心地、吐息の温もり。コンディショナーの香り、暗闇の交わりだからこその鮮明な記憶が甦る。
それを思い出しながら、さらに濃く深いキスを彼女に求めた。
そして中断していたガウンの襟を再開する。尚美の小さな乳房と標準サイズの乳首。控えめな乳房を手のひらでやさしく包み、乳首を指で挟んで愛撫していると、息が荒くなり、乳首が固くなってきた。
彼女の胸は感じやすいと思う。大きく肉の多い胸より、彼女の胸のほうが密に神経が行き届き、敏感になりやすいのかも知れない。と、勝手な解釈で納得してみる。
「あぁ… いぃ… 」洩れる声に嘱されて、さらに激しく愛撫する。
股間に手をやると、厚い唇が熱い粘膜で覆われて、濡れていた。
「あぁ… もっ と… 」
私は乳首を歯を立てて噛んだ。
愛らしく可愛いいものは悪戯に弄んで虐めたくなる。
小さな胸にコンプレックスを感じて捉(とら)われている尚美。
今日の私は愛らしい乳首に執(とら)われてている。
鞄の中に忍ばせている縄のことを忘れている。
尚美を見送ったあと、私は車の中で高原ドライブと山小屋での過ごし方を想っている。
彼女の好きそうなカフェに寄り、お洒落なレストランで美味しいランチをする。今度は雨戸を閉めないで、月明かりで尚美の「からだ」を見たい
と。
ひと通り想いを過ごして、ふと…
生理は大丈夫かな?と、頭を過った。
つづく…
尚美のこと【舌】後編
そっと手を伸ばし尚美の顎の下に手を添えて顔を持ち上げる。
尚美の目の前に私の顔が現れて、彼女の視線は私へ向いた。
私は「口を開けて 舌を」と言った。
「もっと…」「まだ…」
差し出すのを躊躇しているその舌を、二本の指で掴み、私の方へ引く。「あ」に濁音のついたような声が漏れる。暫くすると涎が出てきて滴る。彼女の小さな乳房はそれを受け止められず、涎は糸をひいて腿に落ちている。
私は指で挟んだ舌を離して立ち上がり、硬くなったペニスを握り、狙いをさだめて彼女の顔に近づける。
そして凶器に化した棒で尚美の頬を何度も打った。ぴしゃ ぴしゃと、頬がはじける音が響く。彼女はそれを瞬きを繰り返しながらじっと受け止めている。凶器の先を彼女の唇に当てる。
ほしいか?と言葉にはせず、こころの中で呟いた。それが伝わったのか、彼女はまた舌を差し出してゆっくりと舐め始めた。
私は言った「もっと もっと 舌を出して 巻いて絡めるように」と。
命令的な口調に驚いた彼女は、額に皺をよせて上目遣いで私を見た。その視線に私のペニスがぴくんと反応する。
そして、尚美は私の言うことに従った、とても 素直に。
いずれ自分の内臓に突き挿される凶器を舌で研いでいる、とても 入念に。
その後もこと細かく舌の使い方の指導をした。そして彼女は、とても 上手になった。
私は尚美に言ってみたいひと言を思いついた。手は縛られて使えないので、首を使い、ペニスを含み飲み込んでいる尚美に、その言葉を吐いた。
「気持ちいい… 上手くなった」
「これなら 他の男達も 満足するだろうな」
この思いもしない、衝撃的なひと言を耳にした尚美は、唾液まみれのペニスから口を離し、体を崩しながら、いやいやと小刻みに首を振って、大粒の涙を流した。
今日習得させた、私好みの舌使い。
頭の中で、指導と調教の言葉を並べて置いてみる。
尚美の崩れた体を起こした私は、
もっと過酷な修行へと導くことにした。
尚美のこと【舌】前編
最近、眠りにつく前にあのことをよく思い起こす。
尚美に少し深刻に伝えられた琴線のこと。そして、決まってアルバイト先の店長やゼミの先生と一緒にいる彼女の姿が目に浮かぶ。
レジ打ちを教わっている尚美。英文の解釈を教わっている尚美。大柄な男達の隣りでハタチそこそこの華奢な彼女が、姿勢を正して頷きながら聞いている。
大切なことを教えてもらって、それを習得するために。
…導かれている。
私は以前、尚美からもらった写真を思い出した。ハタチそこそこの清楚で華奢な彼女の学生のときの写真。
探して、見つけた。
或る逢瀬の日、また尚美を縛った。
それは、或る目的のために。
長襦袢を着せた日、洗わせなかった陰部を弄ばれたことが余程恥ずかしかったのか、部屋に入ると彼女は直ぐに浴室へ向かった。たぶん、いつもより入念に体を洗って浴室から出た彼女を、私は部屋着を着させず全裸のまま目の前に立たせた。私はまだシャワーを浴びていない。
今日は何をされるのか、と立ちすくむ尚美を後ろ手に縛る。縛り終えると彼女を跪かせ、私はゆっくり服を脱いだ。彼女は俯いて床を見ている。
私は腰をおとして、視線を逸らす彼女の顔を見る。
そっと手を伸ばし彼女の顎の下に手を添えて顔を持ち上げた。
後編につづく…
尚美のこと【女陰】
縄化粧をした尚美は妖艶さを増した。
尚美はいつもの「電気を消して」とは言わない。今日は言わない気がする。明々とした白日のもとに連れ出された女囚のよう。
このままでは済むはずのない予感に目を閉じて怯えている。彼女の姿を眺めていると、淫らな気分が沸き立ってくる。
私は尚美を低いベッドに横にさせ、長襦袢の裾をゆっくり折った。「あ、いや…」と初めて声を洩らす。構わず、閉じようとする脚を力を込めて開いた。
陰毛の中に隠れていた裏の唇。
白日の陽を浴びる彼女の表の厚い唇と同じで、その唇も厚い様相をしていた。清楚で華奢な尚美の「からだ」の陰に、成熟した女の部分がそこにある。彼女は顔をシーツに押しあてて背け、強く目を閉じて耐えている。
いつもは薄暗いラブホテルの一室で彼女の体を探るように愛撫している。今は彼女の顔も表情も、陰も、よく見える。
そこは、じゅうぶんに濡れていた。見ているだけなのに、じわじわと湿ってくる。キスが好きだと尚美が言っていたのを思い出して、その唇に口づけをして、濡れていたものを舐めてぬぐった。
そして徐ろに、鞄の中から淫らな道具を幾種類か取り出して、弄ぶ。
「いや …」「… やめて」「もう だめ …」
淫具が沈みこみ引き出される音と、尚美の荒い息と声が混ざる。そして彼女は、溢れるものでシーツを濡らし、何度も昇りつめた。
私は淫具を離し、縛られたまま長襦袢で乱れた尚美と交わった。挿入したペニスが、また尚美から溢れてきた熱いもので包まれる。蒸されるような快感で、私も昇つめた。
彼女を隣り街の最寄りの駅まで送って行った。駅へ向かう途中、車の中で彼女が言った。
「わたし あんなこと 初めてだったんです」
どうやら、縛られたことより潮をふいたことを言っているようだった。
彼女の優しい敬語は続いた。
「すごく 恥ずかしかった んです」
車から降りた彼女は、笑顔で軽く会釈をして小さな手を振った。
清楚で華奢な尚美に戻っていた。
尚美のこと【縛る】
ネット通販で購入した麻縄を鞄に入れて、尚美と隣り街のラブホテルへ向かっている。どちらかというと、何処か秘境の温泉宿に籠りたかったのだがそういう訳にはいかない。その代わりに和室のあるホテルを選んでいる。
向かう途中、私は尚美に伝えた。「今日は縛るから」と。彼女は運転席の私を暫く見て「…はい」と応えた。
そう言えば、付き合ってから彼女の拒んだ言葉を聞いたことがない。返事を聞いたあと少し後ろめたさを感じる。
和室に入ると、畳の上に低いベッドが置いてあった。彼女は部屋に入ると、いつも必ずシャワーを浴びる。
しかし今日の私は彼女のルーティンを遮り、いきなり抱き寄せてキスをし服を脱がし、ベッドへ押し倒してまたキスをした。…彼女はまた拒まない。
私は一度彼女から離れて、鞄の中から縄と長襦袢を取り出した。実は長襦袢も通販で購入していた。また実は、鞄の中にはまだ他の物もある。
尚美を低いベッドから起こし、立たせて、長襦袢を着させる。今まで付き合っていた女性にはここで、似合うよ 綺麗だ と褒め言葉をかけるが、尚美には「似合うよ」は似合わない。
寡黙な時間が始まる。
尚美を縄で縛っている。しゅるしゅる と縄の擦れる音が鳴る。その音に混ざって鼻のすする音が聞こえてきた。彼女の正面に移って胸の縄を通していると、彼女の視線を感じる。気がつくと私を凝視している。
尚美は瞼を閉じて寡黙な時間に耐えているのかと思っていたが、彼女の瞳は瞬きもしないで開いている。そして、下唇を薄く強く噛んでいた。
目を閉じれば瞳に溜まったものが流れ落ちてしまうのを、とても強い意思で 拒む ように。
私が後ろに回ってもまだ、消えた気配を見つめている。
とても強い視線で…。
縛り終えたと悟った尚美は目を閉じた。
その意思は、涙となって、…堕ちていった。
尚美のこと【琴線】
逢瀬を始めて何度目だったか、まだ尚美を優しく抱いていた頃…のこと。
一戦を終えて(二戦目をいける歳でないのだが)私の手枕の中に尚美がいた。そして私の胸に頬を置いている。私は彼女の艶のある髪とつむじを見ている。
しばらくして彼女は唐突に「聞いてください」と言ってきた。これから聞く言葉を手枕の中で紡いでいたのだろう。
「昔からずっと、歳上のひとに憧れるんです」
「父はそういう対象には全く見えないのですけど、父の友人やアルバイト先の店長や、ゼミの先生にときめいた感情を抱いていたんです」
私はアルバイト先の店長やゼミの先生の姿を頭に浮かべた。
尚美は一度大きな息をして、続けた。
「父と同じくらいの男性との交わりは…」
「…私の琴線かもしれません」
尚美の敬語はいつも優しくて心地よい。
どうして、父親のような歳の私と付き合ってくれているのか?その疑問は当然あったが訊く機会もなく、そして勇気もなかった。
彼女の告白(カミングアウト)は私の鼓動を早くした。私は相づちもせず黙って聞いている。言葉が見つからず、でも何か言わないとと考えているとまた鼓動が早くなった。彼女はたぶん、私の胸に当てた頬で今それを感じとっているのだろう。
尚美はおもむろに体をずらし、私のペニスに口づけをして、大きくしようと舌を使い始めた。
彼女の体から大事なものがこぼれて、早くそれを私のもので埋めて欲しい… ように。
でも、 ペニスは再起しない。
私はそっと尚美を引き上げ、キスをした。
代わりに彼女の口を埋めた。
次話【縛る】につづく…
尚美のこと【逢瀬】
尚美と逢うのはいつも平日の昼間。隣街のラブホテル。隣の隣街へ向かうこともある。私は会社員だが、退職も近く仕事の融通もつきやすい。彼女は専業主婦 … だと思う。お互いに詮索しないようにしている、暗黙の了解で。
彼女はベッドに入ると例によって「電気を消して」と言う。山小屋の暗闇状態ではないので、目が慣れると細く華奢な体が見えてくる。
彼女の体は柔らかく、抱くと私の腕のなかで揺れている。私に操られているよう。
私はコンドームを付けて彼女の「からだ」の中に這入る。彼女の吐息が荒くなり … そして息が声になる。
近頃、彼女を犯すように激しく求めている。
まるで、虐めて弄ぶように。
まるで、私の腕が縄になったように。
尚美を表にしたり、裏にしたり、犯し続けて果てる。
ふと、尚美を見ると、涙を流していた。
そして、いつもより 幾分か多めに … 濡れていた。
私は家に帰って、ネットで麻縄を購入した。
尚美のこと【からだ】
山小屋の中で裸の尚美を見る。少女の面影が残る細くて華奢な「からだ」。
例えば 彼女の髪を三つ編みにすると、私がロリコンと思われても仕方がないかもしれない。乳房は小さく乳首と乳輪も小ぶり。でもお尻は大きく、唯一大人の体の様を漂わせている。
世間には大きな胸を好む男性は多いと思う。
でも私は、大きい小さいに拘らずその女性の雰囲気に合った乳房が好きだ。
気に入ったレストランでオーダーする小さな盛り付けの一品みたいに。
持て余すほどの乳房。余すのは必要ないのかも。
胸が小さいのは貧乳というが、貧は貪という字に似ている。貪るにはちょうどいい… と思う。
しかし、尚美は自分の体にコンプレックスを待っているらしく、
「お願いします、カーテンを閉めて灯りを消してください」
と 胸を手で覆い、そう言った。
あいにく山小屋にはカーテンはなく雨戸だけ、閉めれば暗闇になる。
暗闇の中でで、私は尚美の「からだ」と
唇を 貪った。
尚美のこと【再会】
何ヶ月か経って、尚美と偶然逢った。場所はヨガのカルチャー教室だった。
レッスンが終わって帰り道、先に歩いている彼女を見つけて声をかけた。
「この先に美味しいスムージーのお店があるんですけど、ご一緒しませんか?」
彼女は快く笑顔で頷いてくれた。
そのお店でバスツアーが悲惨だったこと、ガイドさんの話が面白かったこと、で盛り上がった後。
「今度お天気のいい日にドライブに行きませんか?」
「バスツアーのリベンジで」
彼女はまた笑顔で頷いてくれた。素朴で自然な笑顔ができるひとだと思った。
秋晴れの平日、紅葉にはまだ少し早い県北の高原に、約束通りドライブに出かけた。コスモス畑を歩き、レストランでランチをして、ソフトクリームを食べた。
この近くに私のログハウスの山小屋がある。少し足を休めませんか?と誘って、その山小屋に向かった。
山小屋で、私は尚美をそっと引き寄せ、キスをして、抱き合った。
服を脱がした体が震えていた。
私と尚美は、父娘ほどの歳の差がある。尚美はまだ少女らしさの残る華奢なからだをしている。
網で捕まえたいような、、私の籠の中で飼いたいような、なぜか… そんな気持ちになってしまう。
汚してはいけない、傷つけてはいけない、大切にしたい…
初めはそう想っていた。
尚美のこと【出逢い】
尚美 38歳 人妻。
或るバスのツアーで尚美と知り合った。
夫婦やカップル、グループの多い中、彼女と私は単独の参加だった。私は彼女の隣りの座席に案内され、先に座っている彼女に軽く会釈をして通路側に座った。バスは走り出した。
彼女はスマホのイヤホンで音楽を聴いている。
「we can work it out ですね、ビートルズの」
「すみません、音が漏れてましたね」
「いえ、私もビートルズ好きですから、そのまま聴いてください」
尚美はイヤホンを外して笑顔で話しかけてきた。
「おひとりですか?」
尚美は一緒に参加予定だった女友達が風邪で来られなかったそうだ。私も同じです、友人に急用ができて、と嘘をついた。本当は妻だった。
私たちは仕事のこと、家族のこと、趣味なことを話して過ごした。
でも、そのバスツアーはずっと雨だった。
或る情宴 … 六[完]
浣腸と排泄を見とどけた男達は荒い息をしながら、伏せて泣いている私を引き摺るように布団を敷いた隣部屋に連れていきました。
そして急いで褌を解きはじめ、素っ裸になった男達が私を囲うように群がってきたのです。
勃起薬をすでに服用していたので、男達のペニスは突くように硬くなっていて、私の目には鋭い凶器のように見えました。
私は、浣腸と排泄を見られた恥ずかしさと屈辱のせいか、次第に被虐の耽悦と官能へと…そんな陶酔に陥っていきました。
少し弄られただけで瞬時に感じてしまう体に…
いえ、、見られてるだけで痺れて気を失ってしまいそうです。
そのような私を、男達は入れ替わり立ち替わり、犯しました。
最後は膣と肛門を同時に…。
そして、どちらの穴も区別なく、容赦なく、、、
この世のものとは思えないほどの悦びを感じてしまったのです。
… 完