尚美のこと【再会】
何ヶ月か経って、尚美と偶然逢った。場所はヨガのカルチャー教室だった。
レッスンが終わって帰り道、先に歩いている彼女を見つけて声をかけた。
「この先に美味しいスムージーのお店があるんですけど、ご一緒しませんか?」
彼女は快く笑顔で頷いてくれた。
そのお店でバスツアーが悲惨だったこと、ガイドさんの話が面白かったこと、で盛り上がった後。
「今度お天気のいい日にドライブに行きませんか?」
「バスツアーのリベンジで」
彼女はまた笑顔で頷いてくれた。素朴で自然な笑顔ができるひとだと思った。
秋晴れの平日、紅葉にはまだ少し早い県北の高原に、約束通りドライブに出かけた。コスモス畑を歩き、レストランでランチをして、ソフトクリームを食べた。
この近くに私のログハウスの山小屋がある。少し足を休めませんか?と誘って、その山小屋に向かった。
山小屋で、私は尚美をそっと引き寄せ、キスをして、抱き合った。
服を脱がした体が震えていた。
私と尚美は、父娘ほどの歳の差がある。尚美はまだ少女らしさの残る華奢なからだをしている。
網で捕まえたいような、、私の籠の中で飼いたいような、なぜか… そんな気持ちになってしまう。
汚してはいけない、傷つけてはいけない、大切にしたい…
初めはそう想っていた。
尚美のこと【出逢い】
尚美 38歳 人妻。
或るバスのツアーで尚美と知り合った。
夫婦やカップル、グループの多い中、彼女と私は単独の参加だった。私は彼女の隣りの座席に案内され、先に座っている彼女に軽く会釈をして通路側に座った。バスは走り出した。
彼女はスマホのイヤホンで音楽を聴いている。
「we can work it out ですね、ビートルズの」
「すみません、音が漏れてましたね」
「いえ、私もビートルズ好きですから、そのまま聴いてください」
尚美はイヤホンを外して笑顔で話しかけてきた。
「おひとりですか?」
尚美は一緒に参加予定だった女友達が風邪で来られなかったそうだ。私も同じです、友人に急用ができて、と嘘をついた。本当は妻だった。
私たちは仕事のこと、家族のこと、趣味なことを話して過ごした。
でも、そのバスツアーはずっと雨だった。