尚美のこと【恥戯 四話】
浴室のシャワーの音は終わりそうにない。汗と一緒に流して仕舞いたいものがあるのだろうか?
いつもならベッドから降りて二人でシャワーを浴びるのだが、何故か今日はそんな気にはなれない。
仕方ないので、ベッドに仰向けになって天井を眺めながら、ついさっきまで繰り広げられた戯れのことを思い出していた。すると暫くして、「一緒にシャワー浴びよ」と尚美が浴室のドアを開けて言ってきた。もちろん私は承諾した。そしていつも通り、シャワーの湯に打たれながらお互いの体を掌で撫で合った。
私は勃起している。彼女を見ているとまた、K氏に触られ抱かれている場面を思い出してしまった。凄くリアルに鮮明に。
私は幾度も挿入したが射精はしていない。
彼女は固く長くなったペニスを指で包みソープで洗ってくれた。尚美の体液が付いたペニス、その洗い加減を確かめている。そして白く泡立ったソープをシャワーの湯で落としてくれた。
尚美は指でペニスを包んだまま「これ ほしい」と、私の顔を見て遠慮深そうに言った。私は「いれたい」と、返した。
私が先に浴室を出て体を拭き、後から出た彼女の体を丹念にまた拭いてやる。彼女は両手を上げて応える。…今日の私はいやに優しい。
彼女は永くシャワーを浴びていたせいか体が熱かった。私は全裸の彼女を(お姫様を抱えるように)膝の内側から持ち上げてベッドに運んだ。
そして、絡み合い、お互いの体の隅々を貪り合った。体液の染み付いたシーツを隠すように被せた掛け布団の上で。
尚美はいつもより乱れている。古い記憶を上書きするために、新しい記憶を懸命に創りだろうと… しているようだった。繋がったまま、濃い厚いキスを繰り返す。
ときどき、彼女は上になり「ガゥガゥ」と歯を剥き私を喰らうふりをしてお道化てみせる。またときどき、私の顔を両手で挟み頬を揉みしだき弄んだり… そして、意地悪そうに笑っている。
私は上になって、繰り返し、激しく突く。
尚美がエクスタシーを迎える。
「 いくっ… いくっ… いっしょに おねがい 」
「 なかに、なかにだして なかにちょうだい 」
家に帰ってビールを飲んでいると、尚美からメールが来た。
〈お布団の中で自分でしました、思い出して。私のことを軽蔑しますか?〉
グラスに残ったあと少しのビールをそのままに、長いメールを返した。
でも… なんて書いて返したのか、、今はもう忘れてしまった。
【恥戯 完】