2ntブログ

扉 其の二

絵を描き始める。

自慰を知らない少年は、
妄想を抱え込み、満たそうと必死だった。
描いては捨て、また描いては捨てる毎日。
親が寝静まった頃、勉強のふりをして参考書で隠しながら。

緊縛画。
最初は、あの挿絵を頭に浮かべ模写していた。
慣れると自分で思い描いたポーズをとらせた。
ネットのない時代… 参考にするのは、
離れた町の本屋でこそこそと成人雑誌の立ち見。
時には母親の裸体。

縄で絞られた乳房の描写には難儀していた。
(今でも得意ではないが)
授業中、無意識に教科書の端に乳房を描いて
慌てて消したことも何度かあった。

意味知れぬ欲情、勃起が収まらない毎日。

ふとした時に射精をした… そして安堵した。
これで解放される、止めどない支配に決着がつく。

それからは毎夜絵を描くことを控え、
落ちていた学力を取り戻すことにした。
欲情すれば絵は描かず自慰で済ます。
たまには描いていたが…。


そして、扉は閉じられた。でも、鍵はしないままに、、あえて。


中学1年生の秋だったと思う。
河原で焼け残された雑誌の紙片を見つける。

SM雑誌の小説の項だった。

小説の文面を読んでも、未知の綴りで描写を理解できない。
ただ、挿絵には「吊るされた裸体」が描かれている。

それでも必死に何度も繰り返し読んでいるうちに、
どうやら、男は女を倉庫に監禁して放置してるらしい。
が理解できた。
縛られ吊るされた女は股間から「液体」を垂らし床を濡らしている?
「液体」の意味がわからない…。

どうして囚われたのか、男が帰ってきてこの女は何をされるのか、
知りたかったけど前先は焦げていて読めなかった。
裸にされ縛れているだけでも目が眩むほどの刺激なのに、
ここからまた物語が始まろうとしている。

その後悶々としながら日々を過ごす。
誰にも話せない。

振り返るに、そのとき、
僕は「吊るされた女」に身を置いていたのだと思う。
確かに妄想は被虐側だった。

いつから逆転したのか憶えてないが、
して欲しいことを与える悦び、が、今でもあると思う。


こじ開けられた扉は開いたまま。
締めようとしないまま、だらしなく半開きだ。


プロフィール

鐸(たく)

Author:鐸(たく)
中国地方在住。
60代男性。
自作の緊縛画、責め画を展示し、
その想いや色事を綴っています。
18歳未満のかた、
不快と感じられる方の
閲覧はご遠慮ください。

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色々なご意見やご感想もお待ちしております。

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