亀さん
「亀さん、散歩しない?」
「・・・・・」
「どうしたの?気がのらないみたいだね」
「無意味ですよ」
「どうして?」
「走れるひとが歩くのならいいけど、
歩くことしか出来ない私にとっては意味がない」
「つまらない?」
「ええ、まったく、つまらない」
「亀さんは走りたいと思ったことはないの」
「ないと言えば嘘になります」
「でも、ご先祖様が走る必要がないと思い続けて
こんな風に進化したのだとしたら、
今はこれが正しい姿ということでしょう」
「何かしらの哲学があるはずです」
「なるほど」
「ちょっ、ちょっと、何をなさるんですか!」
「苦しい?」
「どうして裏返しにするのですか?」
「してみたくなって」
「おお、見事に起き上がるね」
「慣れてますから」
「もう!またっ、いい加減にしてください」
「すっかりコツを掴んでるね」
「これも進化でしょう」
「亀さんは楽しそうだ」
「ええ、出来ないことをしなくていいから楽です」
「諦めの境地なの?」
「いえ、悟りの境地に近いです」
「ああ~、亀さんが羨ましいよ」
「貴方の言い方、優越と皮肉の感がありますね」
「あっ、またっ、、、温厚な私も仕舞いには怒りますよ!」
「ほら、頭が擦り剥けてしまったじゃないですか」
「ねぇ、やっぱり散歩に行こうよ」
「それにしても貴方はドSですね」
「そう言う亀さんはドMだね」
「わかります?」