2ntブログ



自分の抜け殻が恋しくて戻ってくる蝉がいた。

置き去った分身を見ながら思いに耽ける。

地中で永く暮らし、地上を夢見た頃が懐かしい。

脱皮。決死の覚悟を思い起こして身震いする。

そこには、前線に赴く兵士のような誇らしさがあった。

限られた時間のなかで交尾という任務を全うする。

逢瀬を愉しむ暇などない、ささやく余裕もない。

「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」?

好き勝手に言えばいい。


もう羽根は開かない、声も出ない、悔いもない。

抜け殻の傍で、ここで尽きることにしよう。

土の冷たさは安らぎだった、肥えた匂いが好きだった。


…一緒に土に帰ろう。



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私はこの時期になると、せみの声で朝方は起こされます。
こんちくしょう。うるさいと思うけど、
せみにとっては、今まで暗い地中で過ごして、
これから短い期間を交尾のために命をついやします。

だれに教えられたのかもしれないが、
種族ごとに、雌をよぶ鳴き声が違う。


生き物のサイクルはいとおしく思う。


さて、今宵も若奥さんに私の種を子袋に放出して、
短い男としての人生の役目を果たすとするか?

上海さんへ

絶倫男は長生きするのか、短命なのか、、。

案外、蝉は絶倫なのかもしれない。 ですね ^^
プロフィール

鐸(たく)

Author:鐸(たく)
中国地方在住。
60代男性。
自作の緊縛画、責め画を展示し、
その想いや色事を綴っています。
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