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淫獣の棲みか 其の四




「ううぅ~~」

両腕の痺れるような激しい痛みを感じます。
瞼が少し開き最初に目に入ってきたのは、足元の汚れた畳。
どうして、そんなに汚れているんだろう?
それから私の足が見えました。竹の棒と縄で縛られた足首。
痛みのある両腕を見ようと頭を上げると、
鴨居か吊り下がった縄で、腕のほうも竹の棒で縛られてました。

顔を正面に向けて目の前を見るとぼんやり誰かが…。
そこに居るのは三人の男達でした。
並んで胡座をかいて座り、こっちを見ています。
皆、裸なの? あれは下着? あの腰の布は? ふんどし?
だんだんと意識が戻ってきます。
そして、今、私がどのような姿なのか知ることになります。

まるで「火」の字のように、両腕、両足を開いた立ち姿で、
その手足はそれぞれ竹の棒に縄で縛られ、鴨居から吊られています。
赤い下着を着けて…、 ワンピースは… 脱がれて ました。


12_1a.jpg


やはり男達は皆裸、ふんどし姿でした。
破れた障子、色あせた襖、おどろおどろしい欄間の柄。
そして、、足元の畳の汚れ。
私が今いるところはいったいどこなの?

奇怪な時空に迷い込み、この世から置き去りにされたような、
意識が朦朧とするなか、まだそんな錯覚に包まれています。
でも、漠然と…、もう二度と現世には戻れない、ここから抜け出せない。
理不尽な宿命の予感はしているのです。
そして、、男達に抑えつけられた記憶が蘇ってきました。
「ああああ~~」
その落胆の衝撃で、また気を失いそうになりました。

「奥さん、気がついたようじゃのう」
「ほほ、よかった、よかった」
男の声で、この悪夢はやはり現実なのだと…また思い知らされます。

「奥さん、畳が汚れてるんが気になるんか?」
「へへへ、じゃったら教えたろう、」
「そりゃあな、おなご衆の汁じゃ」
「汗、涙、涎、鼻水、それとなぁ、へへ、よがり汁、、しょんべんもか」
「いろ~んな汁をな、いっぺい吸って、その染みじゃ」
「奥さんとおんなじ格好にされてのぉ」
そう言うと三人が一声に大きな声で笑い始めました。
笑いながら、「てかてかして赤いんはのぉ、蝋燭じゃ、ほほぉ~」

私は恐怖とおぞましさで体が硬直して声も出ません。
そのかわりに、涙が溢れてきて、それは垂れてほとぽとと、
…足元の汚れた畳の上を濡らしました。
私はこれから何をされるの? どうやって弄ばれるの? いつまで続くの?
私は… 私はどうなるの? また涙が溢れてきて頬を伝い、畳の上に。

「お…、お願い、これをほどいて、おうちに帰して、、」


12_1b.jpg


一人の男が襖の陰から鞄と私のハンドバッグを持ってきました。
そしてハンドバッグから色々と出し始めたのです。
「奥さん、昭子ていうんじゃのう、しじゅうなな(47)かぁ?」
私の免許証を見て言いました。
「うちのかかぁと同い歳じゃの」
「ほんまか、おめぇんとこのあれ、しじゅうななじゃったんか?」
「もうろくじゅう(60)ぐれぇかと思うとった」「こりゃ!!しばくぞ!」
「いやぁあ、おんなじ生きもんには見えんわ、ほほほ」
「まぁ、たしかにのぉ、うほほ」
「こりゃあ、手帳か」「きれぇな字ぃ書くのぉ」
「おお、またベッピンさんがおるで」「娘さんか?、奥さんとよぉ似とる」

「嫌!やめて!勝手に見ないで!」
男達が寄ってたかってを吟味する言い草は「ばい菌」となって、
私達の家庭、生活すべてに伝染し、蝕み腐らせているようでした。

男達は今度は旅行鞄の中身を見始めました。
そこには、夫が秘かに入れたモノがあるはずです。
案の定…
「奥さん、コレはなんだ?」「ほほほ、コレも」「まだあるぞ」
ブウィーン ブウィーン 「こりゃあええ、こりゃあええ、へへへ」
私の体は震えが止まりません。立っていることができません。
鼓動は激しくなり、目眩と吐き気がしてきました。
男達はそんな私を無視して玩具で遊んでいます。
玩具を動かしながら、「奥さん、やっぱり好きなんじゃのぅ、ほほ」
「ち、違います、それは、それは夫が、、」
「おお? ほぅ、ほぅ、ほぅ、なるほどな」
男達が鞄の奥で見つけたものは…たぶん… あの『縄』です。

「そうじゃ奥さん、儂らも自己紹介せんとなぁ」
宿の主人の男が、玩具を撫でながら、私のほうを見て言いました。
「儂ら、よう似とるじゃろう、顔も背も、頭も、ふほほ」
「儂ら三つ子でのぉ、儂が一郎、長男じゃ、そんで二郎、三郎、ほほほ」
「名が手抜きじゃろう、わかりやしぃがの」

ん=うう、うううぅ、ん==うう
「おろ?旦那さんが目ぇさましたみてぇじゃの」
「こっちへ連れてくるかぁ」
「え? 駄目! 嫌、嫌っ! やめて、、」
「なんでじゃあ?、夫婦じゃろう、仲がええんじゃろう ?へへへ」
「この玩具で一緒に遊ぶんじゃろう?」
「お願い、ほどいて! お願い、ほんとに!」
男達は隣の部屋と隔てている襖、後ろの襖を開けました。
私はとっさに顔をそむけて目を瞑りました。
こんな、こんな私の姿…、夫と目を合わせるわけにはいきません。

「ううう=!うう、ううう===」
夫の声が、なんだかおかしいことに気付きました。
くぐもった声、それも押し迫ったような声、、苦しそう。
おそるおそる目を開けて襖の向こう、隣の部屋を見ました。
なに、なに?その格好は、、なんてことを…。「あなた!」
夫は後ろ手に縛られ、足も縛られ、下着一枚で転がされていたのです。
口には猿ぐつわを咬まされていました。

夫は横たわった体のままこちらに顔を向け、
そして、私と目が合ったのです。
夫と私は放心状態で言葉も発せず、しばらく呆然と見合っていました。

「旦那さんとご対面じゃあ」


 {つづく}


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プロフィール

鐸(たく)

Author:鐸(たく)
中国地方在住。
60代男性。
自作の緊縛画、責め画を展示し、
その想いや色事を綴っています。
18歳未満のかた、
不快と感じられる方の
閲覧はご遠慮ください。

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色々なご意見やご感想もお待ちしております。

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