揺れる
誰かに背負われて
誰かに背負われて もう一度眠りたい
すやすや 寝息たてて もう一度眠りたい
ぼくを背負うひとは とても大きなひとだろう
ぼくが 本当の赤ん坊に 見えるために
誰かに背負われて もう一度夢見たい
哀しい想い忘れ もう一度夢見たい
ぼくを背負うひとは 永く生きたひとだろう
ぼくのため息が 泣き声に ひびくように
好きな歌のひとつです。
調教
蝉
自分の抜け殻が恋しくて戻ってくる蝉がいた。
置き去った分身を見ながら思いに耽ける。
地中で永く暮らし、地上を夢見た頃が懐かしい。
脱皮。決死の覚悟を思い起こして身震いする。
そこには、前線に赴く兵士のような誇らしさがあった。
限られた時間のなかで交尾という任務を全うする。
逢瀬を愉しむ暇などない、ささやく余裕もない。
「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」?
好き勝手に言えばいい。
もう羽根は開かない、声も出ない、悔いもない。
抜け殻の傍で、ここで尽きることにしよう。
土の冷たさは安らぎだった、肥えた匂いが好きだった。
…一緒に土に帰ろう。
思惟
淫宴
雑談
僕と君とリョウタくん
僕「この前ね、君の部屋で留守番してた時があったろ?」
君「ええ」
僕「その時、君の犬、リョウタくんだったけ?
突然僕に話しかけてきたんだ」
君「そう、何を言ってきたの?」
僕「まず、僕たちのセックスのこと」
「お前たちも哺乳類なんだからみっともない恰好で交尾するな、
後背位でしろ、それこそが正常位なんだ、って」
君「おおきなお世話よね」
僕「声のことも…、、黙ってしろって」
君「そう、他には?」
僕「リョウタって名前、君の元彼の名前なんだってね」
君「・・まったく、おしゃべりな犬ね」
僕「もうひとつ、、深刻なことを告げられたよ」
君「なんて?」
僕「僕の他にも交尾している雄が2、3人いるって」
君「・・・・・」
「…口止めしておいたのに」
僕「僕も、リョウタくんに口止めされた」
僕「彼は君のこと、たぶん愛してる」
君「あなたは犬の気持ちがわかるのね」
僕「リョウタくん、どうする気?」
君「もう愛想が尽きたかも、、捨てちゃおうかなぁ」
僕「僕がもらってもいいかな」
君「いいわよ、煮るなり焼くなり好きにすれば?」
僕「いや、可愛がってあげるよ」
「彼とはうまくやっていけそうな気がするんだ」
僕「彼に新しい彼女でも紹介する」
「誰にでもしっぽを振らない素敵なひとをね」
連れ込み旅館
ある小さな料理屋。
男が女に声をかけて話が盛り上がる。
女は酔い、男が介抱する。
店を出て男は女を送って行く。
少し休んでいこうと女を誘う。
女も優しいこの男に惹かれて…
男「もう酔いは醒めたみたいだね」
女「はい、大丈夫です、ありがとうございます」
男「ちょっとだけ縛らせてくれない?」
女「え?・・」
男「大丈夫、すぐほどいてあげるから」
女「・・・でも… こわい」
男「SMって知ってるよね」
女「・・・はい」
男「僕は縛られた女性を見るのが好きなんだ」
「大丈夫、ただ縛るだけ」
女「・・じゃあ、、少し、…だけなら」
男「やっぱり思った通りだ」
「君は縄がよく似合う、とても綺麗だよ」
女「・・・ちょっと、、きついです」
「もう… もう、いいですか?」
男「もう少しだけ、もう少しだけ見ていたい」
乳房
男「近頃ね、死後の世界のこと、よく考えるんだ」
女「天国や地獄っていうこと?」
男「それも含めて」
女「そう」
男「先に行ってる向こうの人達に、また会えるのかなって」
女「どうなんでしょうね」
男「そっぽ向かれたり、居留守を使われたり、
『お前なんかに会いたくない』って言われたらどうしよう」
「そんなこと考えたら不安になるんだ」
女「不安になること、何かしたの?」
男「…わからない」
「向こうの人たちは僕のこと見透かしていて、
偽善なところ、卑怯なところ、全部知ってるんだ」
「そんな僕とまた仲良くできると思う?」
女「あなたって、臆病なひとね」
「安心して。もし私が先に行って後からあなたが来たなら、
満面の笑顔とハイタッチで迎えてあげるわ」
男「ありがとう」
女「ねぇ、くすぐったいってば」
「そんな話聞きながらお乳揉まれてても、、感じないわ」
男「僕は感じてるよ」
女「嘘ばっかり、ほら、勃起なんてしてないじゃない」
男「嘘じゃないよ・・・」
「・・嘘じゃない・・・」
女「…あら、、寝ちゃったの?」
空
石
「今は我慢することが必要です。
言葉をお捨てなさい。
言葉は石になります。」
或る小説の一文に心がとまった。
そして思いをめぐらせる。
軽い石、重い石、固い石。角張った石…。
投げても届かなかったり避けられたり。
転がって大概は置き去りにされる。
不意に跳ね返って自ら傷を負ったり、
足元に堕ちてきた石でつまずくことも。
石は積み重なり、やがて岩となり、
分厚い塀と化して自分の周りを取り囲む。
しかし塀は脆く、いつか崩れて押しつぶされる。
前を進むには寡黙に歩く。邪魔な石は捨てて。
(自己解釈)
ところで…
絵というのは言葉よりも伝えやすかったりする。
仕事でもモノのイメージをスケッチブックに描いて説明する。
…言いかえれば言語能力が低いのかもしれない。
思い描いた情景を紙面に移しかえる。
幾分か大袈裟に、幾分か派手に、幾分か悲惨に。
そこには虚栄心に似た欲望があるのだろう。
思いというよりは成し得た仕上がりに満足する。
仕上がりとは「伝えきる」こと。「これでどうだ!」みたいに。
ところで、
描き手を知らない人は絵を見て実像をイメージする。
暗い絵を描けば陰気なひと、明るく楽しい絵を描けば陽気なひと。
たぶん僕の外見は、スケベっぽく、エロさを滲み出している、ひとなのかな?
今ここで「そんなことはない」と否定しても仕方がないが、
…そんなことはないです!(笑